山形平和劇場 朗読・劇『野に咲く花は空を見ている』 特高に奪われた青春　言語学者 斎藤秀一の生涯

演出のことば

　斎藤秀一（ひでかつ）は地元以外ではあまり知られていません。明治の終わり頃に鶴岡市に生まれ、昭和の初めに活躍した言語学者です。朝日村の分校で教師をしていた時にローマ字を教えたことで検挙され、厳しい取り調べを受け32歳の若さで亡くなりました。当時、深刻な不況と貧困にあえぐ日本が侵略戦争へと猛進するさなか、秀一はエスペラント語という世界共通語によって世界中の人々と心を繋ぎ、戦争や貧困を無くすことに命を捧げました。
　しかし、治安維持法が彼の思いをはばみ、打ち砕きました。政府にとって都合の悪い思想、運動、芸術表現、その他あらゆるものが弾圧されました。何か、今の世の中にも当時と変わらないものが有るようで、ぞっとします。
　コロナ禍により延期せざるをえなかった舞台がようやく幕を開けます。齋藤秀一の生き様をご覧いただき、「純粋であること」や「実直にいきること」の大切さを思い起こしていただけたらと願っています。